リスクとは、何か

日常業務や事業の目的を達成するには、「リスクとは、何か」を正しく理解しておくことが求められることは言うまでもりません。

そうでなければ、企業を取り巻く内外の状況について抜けのない、的確な現状把握が難しくなる恐れがあります。

このような不備な現状把握からPDCA サイクルをいくら回しても大した結果は得られないことは明らです。 

問題は、「リスクとは、何か」を正しく理解できていない企業が多いという現実です。

日本人の潜在意識の中にリスクは、「危険」とか、「危機一髪」という先入観が深く沁みついているため、リスクの定義を正しく理解する上で妨げになっていると思われます。

では、リスクを正しく理解するには、どうすればよいでしょうか。

念のため、主要な国際規格で定められている「用語の定義」に立ち戻って確認しておくと、身近なところでISO9000:2015版では、リスクとは、「不確かさの影響」と定義されている。

 例えば、不確かさとは、ある製品の生産工程において、製造装置の故障が発生し、計画通りの生産量を確保できなかった。

ここでは、製造装置がいつも安定して動いてくれるとは限らないという不確かさと、この不確かさのため、計画通り実施できなかった、計画に影響を与えた又は阻害となった要因、これをリスクとして扱う訳です。

また、次の例では、ある組立工程においてムリ・ムダ・ムラがあることが分かり、生産効率を落としている要因であることが判明した。

ここでは、ムリ・ムダ・ムラが事業目的を阻害する要因として、リスクとして扱うことになります。

 リスクとは、個人の日常生活を含め、日常的に仕事上で平時に発生する問題点「事業目的の遂行を阻害するあらゆる要因」をリスクとして取り扱う必要があるということであり、そのリスクに応じたリスク対応が必要になってきます。

しかし、多くの企業が、非常時などの不測の事態や重大リスクに焦点を合わせ過ぎて手順化されているケースが多く見られます。

このため、企業を取り巻く内外の課題から的確なリスク及び機会の洗い出しを妨げ、かつ、リスク分析・特定に伴う改善活動を難しくしているのではないでしょうか。

 当協会では、これらのアプローチ支援が必要な場合には、「リスクとは、何か」、短期間の養成講座開催など個々に計画し、技術相談・支援を行う用意があります。

気軽にご相談ください。

(執筆:佐野 興一 2021年10月3日)

 

 

 ISO9000:2015版における「リスク」の定義

リスク:「不確かさの影響」

注記1:影響とは、期待されていることから、好ましい方向又は好ましくない方向に乖離することをいう。

注記6:この用語及び定義は、ISO/IEC専門業務用指針―第1部:統合版ISO補足指針の

附属書SLに示されたISOマネジメントシステム規格の共通用語及び中核となる定義の一つをなす。

薬(クスリ)とリスク(副反応、副作用)

新型コロナウィルス感染予防にワクチン接種が進められている。主なものにファイザー製やモデルナ製、アストロゼネカ製などがある。すでに接種を終えた人が多数いるが、副反応がでた人も多くいる。注射部位の痛みや発熱、頭痛、倦怠感、疲労そのほか、アレルギー反応によるアナフィラキシーなどがあげられている。偽ニュースでは、遺伝子が書き換えられるとか、妊娠、出産に影響が出る等がSNSほかに出ている。

今回ワクチン接種でいろいろと副反応が報じられ、リスクを事前に知ることができた。ワクチン接種は、個人の判断によるが、これだけのリスクを考慮しながら多くの人が接種したのは、コロナに対する脅威からではないか。

ワクチンは、1つの薬である。薬の処方にこれだけリスクを考えたことは、少ないのではないか。毎年冬を迎えるにあたり、インフルエンザ予防でワクチン接種をするが、副反応を考えて接種を受けている人は少ないのではないか。

当の私は、インフルエンザワクチン接種で副反応を考えて接収したことはない。また持病で糖尿病や高血圧があるが、これまで医師の指示に従い処方したものを副反応、副作用を考えずに、処方されたものを薬局に行き、薬をもらい受け、服用してきた。

しかし糖尿病では、ある時副作用を聞き、薬局で調べてもらった。私の身体に異常が発生しているのは、薬の影響であることを知った。それで、医師に話をして、その薬を止めてもらうように話した。しかしその医師は、副作用はないと主張し、糖尿病を良くしたいなら、薬を飲むようにと言った。さらに薬局に電話して薬の副作用について、患者に話すなと言った。これでは、話にならないと考え、医師(病院)を変えた。

同じく高血圧の降圧剤でも同じことが発生した。降圧剤ニフェジピンCR錠を処方され、飲んでいたら、足がむくみ、足に力がなくなり、頭が痛くなった。インターネットで副作用について検索したら、私の症状と同じものが出ていた。医師は、薬の副作用は、知っていたが、血圧が高いと脳梗塞になりやすいからと継続して飲むようにと勧められた。しかし私は、飲むのを止めた。その後、脳神経外科の診察を受け、この話をしたら、副作用が出ているなら、服用をやめるのは、正解だと聞いた。その後、降圧剤を勧めた医師の継続した治療をやめた。

これらのことから、私や多くの人は、医師から薬を処方してもらって、副反応、副作用の話を聞かずに服用している場合が多い。

今回ワクチン接種で得た教訓、接種前に副反応を聞き、対応を考えて接種を受ける。

薬は病気を和らげてくれる。しかし、副反応、副作用、これらはリスクである。今後医師から薬を処方されたら、副作用、副反応がないか確認するようにしなければならない。

HACCPの義務化

昨年から新型コロナウィルス(COVID-19)によるパンデミックが止まりません。こちらは現在も継続し、ここへきてデルタ株の発症者が急激に増えています。

それだけではなく、水害の方は数年前から台風等による大雨が猛威を振るい、数年前の関西の台風、一昨年の台風15号・19号に引き続いて今年も前線の影響で九州や中国地方を中心に大雨による災害が続いているという非常に厳しい自然災害に見舞われています。

被害に遭われた方にはお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興を祈っております。

さて、これだけ色々リスクが顕在化すると、BCMもやることが多すぎて何から手を付けていいのやらという感じです。

そのような中で、ですが、飲食店や食品製造業者といった食品関係の事業者にはもう一つ手を付けなければならないものが増えてしまいました。

それは改正食品衛生法の施行です。

令和3年6月1日、我が国の改正食品衛生法が施行され、HACCPが義務化されました。

概要は、以下のサイトに概要が掲載されています。

HACCPに沿った衛生管理の制度化https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kaisei/haccp.html

しかし皆様あまりご存じないようで、飲食店の方に聞いても知らなかったといわれることが多々ありました。

そもそもHACCPとは何なのか。なぜHACCPが義務化されたのか。
ご存知でない方もいらっしゃるかと思いますので、順を追って説明していきたいと思います。

まずHACCPとは何でしょうか?
これはHACCPとは以下の単語群の略で、危害分析必須管理点と訳されます。

ざっくりいうと、食中毒等が発生しうるポイントを分析し、重要なポイントを継続的に管理等することにより、これらを未然に防ぎましょうというものです。

H・・・hazard=危害
A・・・analysis=分析
C・・・critical=必須
C・・・control=管理
P・・・point=場所・工程

例えば飲食店の場合、材料の納入や保存、調理、保管、提供といった手順があり、それぞれリスクが顕在化する要因があるわけです。

牛乳をテーブルの上に放置して菌が繁殖してしまった、従業員がトイレに行った際に手を洗わなかったため菌が食材や食器に付着してしまったなどが考えられるわけです。

このようなことが起こらないように、現状を分析し、といったシステム化(計画、手順の文書化と記録の保管等)をして、リスクの高いところを重点的に管理しましょうというものです。

ちなみにISOにも食品衛生の分野は存在し、ISO22001がこのHACCPにあたります。

日本でもJFS(一般財団法人食品安全マネジメント協会が作成した規格)という規格があり、同じようにHACCPのような管理をすることになっています。

当協会のメンバーでも対応できる方がいるので、導入を検討されていらっしゃる方はご相談ください。

なぜ義務化されたかということについてですが、これは世界的な流れです。

実は以前から世界的に食中毒防止が課題とされてきたのです。
観光という観点から食中毒防止が注目されています。
そこで、HACCP(ハサップと読みます)の義務化が世界的に進んだのです。

ちょっと遅めの韓国でも10年近く前に法律ができており、このようなことには敏感な欧州などはそれよりずっとまえに義務化されました。

我が国は先進国の中では、この方面で少々遅れをとっていたというのが実情です。
そこでいよいよ法令により義務化となったわけです。

平成30年に法改正し、今年6月から施行されました。

しかし新型コロナウィルスの第5波と重なってしまったためこちらが優先されてしまいそうで、何とも間が悪いことになってしまったものです。

では、施行されて何か変わるのでしょうか。
小規模企業の多い飲食業界です。
義務化して効果があるのかという疑問はあるでしょう。

これはあると考えられます。
飲食店や食品製造業は基本的に許可制です。
つまり許認可が必要となっています。

官公庁の資料を読む限り、ここで許認可の更新の必要書類として、今すぐではありませんが、HACCPが求めている計画、及び記録類を提出する必要が出てくることになります。
ですから変わらざるを得ません。

とはいえすぐに、というわけではないようですが、やらなければ事業ができないというリスクになっていきます。

飲食店などは非常に厳しい状況ではありますが、逆にHACCP導入の良い機会だととらえて、今HACCPを構築し、よりリスクに強い事業体へと体質を強化させましょう。

特に飲食店の場合、今なら保健所が指導してくれそうな雰囲気があります。
今のうちに相談してみてはいかがでしょうか。

東京都の保健所は、以下のサイトに掲載されています。

東京都福祉衛生局 都保健所一覧
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/hc.html

しかし、ある程度の規模の企業などはそのようなわけにもいかないものと思います。
そのときは当協会にご相談ください。HACCPによる手順の作成や記録の残し方につて、一緒に検討し、構築しましょう。

 

 

 

監視及び測定のための資源の審査

ソフトウェア開発会社の定期審査の前に、品質マニュアルを確認していたら、「7.1.5 監視及び測定のための資源」を適用不可能にしていることに気がついた。

どうしてだろうかと、審査の中で聞いてみたいと思った。

当受審組織は、登録審査から約15年が経過していた。

審査が始まり、まず管理責任者面談になり、確認してみた。登録審査以降、過去審査員、審査機関から適用不可能にしていて何ら問題になっていないという。

監視及び測定の資源は、検査、試験にハード及びソフト的な機器・装置を使用していないと説明があり、審査員、審査機関は、了解しているという。

時間があまりなかったので、個別のプロジェクト審査で確認することにし、管理責任者が同席することになった。

最初のプロジェクトで、スケージュール管理(監視)は、どのようにしているかを尋ねると工程表:ガントチャートが出てきた。

これは、工程を監視しているものですね。

受審組織の担当者は、はい、そうです、とあった。

ソフトウェアの完成度は、どのようにしてみていますか。

開発日程とバグの摘出状況を見るバグ死滅曲線を作成して管理していますとあった。

これら、ガントチャートやバグ死滅曲線が、監視及び測定のための資源ですと話し、皆さんは、監視及び測定のための資源を利用しているのです。

これらは、校正を必要とするものではないが、皆さんは、7.1.5項を適用不可能にしているが、実際は、適用しているのです。

また、「9.1 監視,測定,分析及び評価」と関連してみていくと良いです。

何を監視、測定するかを決めて、どのような手段(ハード的な機器・装置、ソフトの利用、図や表、QC7つ道具等)を説明し、9.1項、7.1.5項を絡めていけば了解されるでしょうと話し、了解を求めた。管理責任者も同席しており、このような話しは、過去から、一度も聞いたことがないという。

有効性評価

2021/7に審査した受審組織では、上司から部下に対する助言、アドバイスを「ワンポイントアドバイス」として管理する制度を設けて、一覧表を作成していた。どんな内容か、一覧表を読んでみたが、小さな指示や大きな指示があり、それらについて簡単な助言(アドバイス)が記載されていた。

必ずしも提出する件数の目標はなかったが、全社的取り組みで、業務のケアレスミスの防止やプロセス間(他部署間)の行き違い防止に役立っていた。いい制度だなと思った。

そこで、再度一覧表を見直した。同じアドバイスはないかを確認した。見た限りでは、同じものはなかった。

受審組織にこの制度の有効性をどのようにみていますかと聞いた。すると今のところ、有効性を必ずしもみていないとあった。ISO9001:2015 ではパフォーマンスを求めており、有効性を確認するように仕組みを追加したらどうかと提案した。

また、有効性をあげるために活用方法を検討するのも良いだろう。一覧表を基に部下への教育資料として活用することも検討に値する。

有効性の1つに同じようなアドバイスがないかをみていくのも良いだろう、定着して、効果を上げていると評価するのも良いのではないかと。また、業務の生産性、金額換算等でみていくのも良いのではないかと考えながら、審査の改善の機会にした。受審組織も受け入れてくれた。

情報や記録の価値

ある事象に対する情報やデータ**をある意図をもって解釈し、その価値を誇張したり、強調して編集され、加工されて伝達される、これが情報操作である。一般的に、悪い意味で用いられることが多い。報道機関にあっては、この行為は、本来の情報の価値を失うばかりでなく、人心を惑わし、扇動するリスクになりかねない。リスクとしてこれほど怖いものはない。やってはならない行為であり、禁じ手である。

 情報は、客観的事実を根拠にありのままに、迅速に、利害関係者に伝えてこそ利用価値がある。

何が起こったかの事実(事象)は、たった一つしかない。一つしかない事実が、立場によって意図が働けば、受け止め方も解釈が異なり、公平性に欠けることになる。例えば、原告と被告の関係、加害者と被害者の関係、製品やサービスに対する顧客満足評価の関係も製造側とユーザーとで異なることがよくあり、訴訟や賠償、製品品質問題、クレームなどが発生する。これらの事象は、あくまでも事実をよりどころとして利害関係者間で生ずる問題を社会通念、原理原則に照らし合わせて調停・裁定し、解決される。

しかし、これらの案件がある部分しか知らされないとか、誇張されて報道されたりとなれば、報道機関の責任は重大である。国際社会において将来の方向性のない、短絡的な考え方や営利目的に主眼を置いた偏った報道に終始すれば、間違いなく、国の将来を危うくする。

スポンサーも過大広告、宣伝に固執すれば、民衆の支持を失う。誘導するリスクを負っていることを常に自覚する必要がある。アスリート、観客、視聴者という顧客があってこそのスポンサーであることを認識することである、例えば、オリンピック開催時期を開催国の都合や気候を最優先すべきであり、スポンサーの意向で決めるものではない。このような短絡的な考え方に固執すれば、ゆくゆく、本来の顧客(スポンサーファーストではない)を失い、オリンピック精神に反し、衰退の一途を辿ることになるであろう。金が掛かり過ぎるという理由で積極的に開催国として名乗りを挙げる国や都市の減少傾向がすでに始まっている。

一方、記録の価値とは、何故、記録をとる必要があるかは、システムや仕組みを維持・改善するために記録をとる場合と計画目標に対する達成状況を評価(検証)するための2つがある。いずれの場合においても検証で最も重要なことは検証データをどこまで掘り下げて客観的事実として捉えることができるかであり、そこから先は推測(仮説)しかできない領域であることを明確に切り分ける必要がある。とった記録がどこまで客観的事実として分かったこととして利用できるかをはっきりさせる。つまり、とった記録に推測も含めた拡大解釈の重荷を課してはならないのである。それを許すと、折角とった記録が、次の段階で適切な見直し計画を立てることを難しくして効率の良い、有効な検証データが得られない、無駄な計画になり兼ねないのである。事実か推測かを明確に識別することは、見直し計画の最適化に不可欠な前提条件を提供していると言っても過言ではい。

 

*情報:意味のあるデータ、**データ:對象となる事実

注)用語の定義は、ISO9000:2015「品質マネジメントシステム-基本及び用語」による。

                      

執筆:佐野 興一

今こそBCM・BCPの構築を!

新型コロナウィルス(COVID-19)が猛威を振るい始めて1か月余りが経過しました。
発症された方が一日も早く回復されることをお祈りするとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。

さて、ついにこのCOVID-19はパンデミックとなり、世界大戦に匹敵するような経済的被害が発生してしまいました。我が国経済も深刻な打撃を受けています。
このため、日本取引所の新規上場申請については、新型コロナウイルス感染症の影響が事業計画に適切に反映されているかどうかを審査するという項目までできたそうです。

また、人的被害も甚大で、世界では死者が3万人を突破して未だ衰える気配がありません。
特に最近は欧米の発症者の数が多い、地域も限定されていない、ワクチンや有効な治療薬が存在しない、インフルエンザと違い暖かくなっても勢力が衰えない可能性が高いため今後も流行は継続しそうなどの理由から、最終的にはさらにその数は増えるものと予想されます。

その中で、日本は発症者の数が増えていて危険な状態ではあるものの、比較的対応が良く、善戦しているグループに入ると思います。
初動こそ有効な措置が取れなかったものの、その後は早い段階で素早い対応を行い、1000人強(2020年3月29日現在)の発症者で収まっています。
これは政府の対応策に対し誠実な対応を取っている日本在住の方が多いためというのが理由の一つであると思います。

これとともに政府が比較的早い段階で有効な対応を行ったということもあるでしょう。
これはなぜ可能であったのか。
あくまで私見ですが、2009年の豚インフルエンザ(新型インフルエンザ:H1N1)の教訓を彼らが活かした結果ではないかと思います。

2009年の豚インフルエンザの際に、我が国政府は様々な官庁からパンデミックBCMやBCPのガイドライン等が作成・公表されました。
おそらくこれらを彼らも使用したものと考えられます。

このような資料は今もインターネットで公表されています。
一例を以下にあげておきます。

内閣府
事業継続ガイドライン第三版 解説書
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/guideline03_ex.pdf

中小企業庁
新型インフルエンザA(H1N1)対策のための事業継続計画
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/influenza/download/A_H1N1_BCP.pdf

中小企業BCP策定運用指針
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/index.html

厚生労働省
事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン(改定案)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/dl/s0730-13e.pdf

これらは10年以上前のもので、少々古い情報ではないかと思うかもしれませんが、そのようなことはありません。
新型インフルエンザも新型コロナウィルスも同じパンデミックのグループに分類されており、新型インフルエンザのところを新型コロナウィルスに読み替えればほとんどそのまま使えます。

実際に上述のガイドライン等を読み解いていけば、彼らがほぼこれに基づいて動いていることがわかると思います。
喜ばしいこととはいえませんが、10年後に有効性が実証されたということでしょう。

新型コロナウィルスの猛威はまだしばらく続くことが予想されます。
今からでも遅くはありません。
皆様の会社、組織におかれても、パンデミック用のBCM・BCPを構築しませんか?
日本BCM協会では、そのようなご相談をお受けしています。

品質マニュアルは、品質マネジメントシステムの仕様書か

審査では、前回の指摘事項を確認することになっている。下記の指摘について、指摘のいきさつや、どのように改善したのか確認したかった。

指摘事項(改善の機会)

「品質マニュアルは、QMSの仕様書です(JIS Q 9000:2015 3.8.8項参照)が、2015年版規格の内容の多くは反映されておりません。新規格が運用されていない事例が観察されるため、QMへの規格内容の反映の必要性の検討及び/又は新規格の要員への教育訓練の必要性検討の余地があります。」

審査初日に、管理責任者に確認した。

前回の審査員は、品質マニュアルは、ISO9000:2015 品質マネジメントシステムーー基本及び用語 を引用して、品質マニュアルは、ISO9001:2015 品質マネジメントシステム 要求事項 を引用し、仕様書に即して要求事項をそのまま記述し、組織の適用、手順書他を付け加えて作成するものです とあったという。品質マニュアルは、要求規格を丸写しして、当組織の手順書、記録などを付け加えて作成するとあり、それに、改善して再作成してくださいということであった。

私がいただいた当組織の品質マニュアルは、第1章適用範囲、第2章計画、第3章運用、第4章評価・分析、第5章対策 となっていた。管理責任者に品質マニュアルは、改訂したのですか と確認したところ、新しい審査員が来たとき、確認してから行おうと改訂しませんでしたとあった。そして、私に品質マニュアルは、要求事項を丸写ししたものを作成しなければならないのですかと聞いてきた。

私は、品質マニュアル作成は、規格の要求事項からなくなった、従って、品質マニュアルは、作成してもよいし、作成しなくてもよいですね。また、作成するにしても規格要求事項を丸写しするかどうかは、組織の自由です。皆さんの品質マニュアルは、社内で検討し、このように作成しようと決めたのであれば、それでよいです。

管理責任者は、審査機関の規格説明会で、上記のように聞きました。従って、私たちの組織では、審査機関に渡した、今回私がいただいた品質マニュアルを作成しました。規格要求事項に従ったものではなく、当社の実施すべきことをまとめたものにしました。

前回の審査員との間では、このことを説明しましたか、と聞いた。

管理責任者は、審査員に貴社説明会で聞いたことを話し、品質マニュアルは、規格要求事項ではなくなったので自由に作成してよいと聞き、社内で検討した結果がこのようになったのですと説明した。

しかし審査員は、ISO9000:2015 品質マネジメントシステムーー基本及び用語 の品質マニュアルの用語の定義、品質マネジメントシステムの仕様書 だから、規格の要求事項をそのまま記述し、貴社の手順書、記録などを追加して作成してください とあった。

これについて、管理責任者と審査員のあいだで平行線となった。組織幹部の意見で、審査員の意見を聞いて改善していこうとなり、改善の機会を受け入れた。

管理責任者は、品質マニュアルを改訂せず、今回審査員私の意見を聞いてから、改訂するかどうか決めたいと考えているとあった。そして私の意見を確認してきた。

私の考えは、上記の通りです。品質マニュアルは、作成しても良いし、作成しなくても良いです。作成するとき、どのように作成するかは、組織の自由です。貴社が、作成したもので良いと考えます。付け加えるならば、品質マニュアルは、誰が読むのか、読む人にわかりやすくなっているかが大事だと思います、と話した。

審査員は、品質マニュアルに要求事項に従った記述、規格要求事項のデッドコピーを未だ求めているのかと、非常に古い型の審査員であろう。1994年版までは、これで良かったが、2000年版から規格要求事項のデッドコピーを求めていない。その後の2008年版、2015年版しかりである。無用な要求(改善の機会)は、しない方が良く、組織に無用な混乱を及ぼすことになる。

また、基本と用語にあるが、品質マニュアルが、品質マネジメントシステムの仕様書と位置づけるなら、要求事項に明確に要求されるだろう。しかし要求されていないので、あくまで、参考の位置づけで良いのではないか。それとも、日本語への翻訳で十分意図したものになっていなかったのではないか。

注)ISO9001:2015 品質マネジメントシステムーー要求事項の引用規格としてISO9000:2015 品質マネジメントシステムーー基本及び用語 があるが、審査で使用するのものではない。

地震が日本の歴史を創造

地震が起ったために、その後の歴史が変わったといわれる地震や津波がある。
人知の及ばない自然現象は「天の采配」として、時の権力者や権力を狙うグループに襲いかかる。
我々は歴史の結果を知って批判をしているが、当事者は必死にもがいているだけである。

地震や津波の被害に対する応急処置の良し悪しによって、時の権力者の良し悪しの評価となり、時の天皇や将軍を支持していくかどうかの判断をした。
つまり税金や食糧の出納を行っていくかどうかの判断を責められたのである。
平安時代には天皇の詔で対処した。
鎌倉時代には宮将軍が地震を理由に京都へ追い払われた事例もある。
もっとも、鎌倉の執権北条氏と朝廷との争いの結果ではあるが、飾り将軍が意思を持つと排除された。

源平合戦(1180年〜1185年)にも地震が絡む。1185年(元暦2年3月24日)の「壇ノ浦の戦い」後、7月9日に起きた「文治地震」は琵琶湖西岸断層帯の南部堅田断層から大地震が発生した。京都は壊滅的被害を受けた。しかし、地震の被害は全国にまたがり南海トラフの巨大地震であったと推定される。平家の元所領であったが頼朝の所領になっていた西国や日本海側も被害甚大、そのため世間では「平清盛が龍になって地震を起こした」と噂され、「龍王勤(りゅうおうきん)」とも呼ばれている。源頼朝にとっては地震が追い風となり「武士の時代を開く鍵」となった。

1185年(文治元年12月21日)には「文治勅許」で頼朝に守護・地頭の設置を許し地震の復興を行わせた。元所領の地震災害に貢献できなかった西日本の平氏は出る幕がほとんどなくなった。しかし、頼朝は源義経を追討し、ついでに奥州の藤原氏を壊滅させた。

もともと頼朝が関東の戦いで勝ちえたのも関東の武士達の朝廷に対する不満が潜在していたからである。
878年(元慶3年9月29日)には相模・武蔵で伊勢原断層による地震が起き、相模国が大きな被害を受けた。
関東諸国の建物で無傷なものがなく、圧死者が数知れずといわれている。

朝廷では嵯峨天皇の「不徳の詔」を出したが、それで地震の被害者が救われたわけではない。
9年前の869年(貞観11年5月26日夜)に古代最大の地震である「貞観地震」も経験していた坂東以北の武者たちは源義家と奥州で戦った武者達の子孫でもある。
劣勢の頼朝に味方して朝廷の一旦であった伊勢平氏と対立していった。もともと、坂東八平氏から離れていった分家が伊勢平氏であり、平清盛はその子孫である。

伊勢原地震の頃の朝廷側では菅原道真が「地震の成り立ち」の試験問題を答えて官位に採用された。地震が頻繁に起こっていたから試験問題になったのであるが、回答は唐の漢文による知識であった。
道真が藤原氏の他氏排除による失脚後、関東では平将門の乱が起った。
同族の領地争いが原因であったが、藤原氏の他氏排除の政策の延長に起こった反乱であった。

源氏でも源高明が「安和の変」で失脚し、朝廷は藤原一色の摂関政治になった。
奥州では「前五年・後三年の役」が起り、源氏の戦いに関東の武者達も戦いに巻き込まれていく。

伊勢平氏から出た平忠盛が荘園を寄付して昇殿を許され、京都では平氏の分家が源氏と争い、政権の座についた。
関東では平将門を成敗した武家の子孫同士が、敵味方に分かれての混乱は「平将門の怨霊」が災いして頼朝の縁者を排除して、鎌倉幕府として日本を統治していく。

1290年(正応6年4月12日)の「永仁鎌倉地震」の後で「平禅門の乱」が起った。
執権北条貞時が地震の災害の大きさ恐怖となり内官領の平頼綱に権力が争奪されるとの妄想にとらわれたヒステリー粛清劇であった。
鎌倉の平氏が滅亡していく内紛でもあった。40年後に源氏による室町幕府ができるのも永仁鎌倉地震の結果であろう。

1498年(明応7年8月25日)の「明応東海地震」の後には二人の足利将軍(義植と義澄)の対立に発展していく。
津波によって鎌倉の高徳院の大仏の台座が流された。大きな津波地震は当然、大きな災害であった。
西伊豆や沼津などでは10メートル〜30メートルの大津波が押しよせ、被害甚大であった。
そんな状況下で室町幕府の政所執事の伊勢守時が今川氏の縁者として将軍足利義澄の「義兄堀越公方茶々丸討伐の命」を受けて伊豆入りした。

地震によって浜名湖が淡水湖から海岸線がえぐられ淡水湖から汽水湖になったため将軍足利義植方の西方からの兵は攻めてくることはなかった。
盛時は足利茶々丸を敗死させ、「四公六民」の善政を布いた。早雲は韮山城を居城としていたが、小田原城を攻め「下剋上の先駆け」となった。  
伊勢盛時は伊勢新九郎とも北条早雲ともいわれている。
鎌倉幕府の北条の家の子孫とも縁を結び、関東に覇権を及ぼしていった。

早雲の孫の北条氏康が後北条として関八州を平定するが、戦国時代には徳川家康が江戸城に入城して、後北条の関八州をそっくり手中に納め、徳川幕府の拠点となった。
現在、江戸城は明治維新により皇居になったが明応地震の結果ともいえる。

時の流れを一挙に過去から現在へシフトさせると、首都直下型地震が4年以内に起こる確率は70パーセントと発表されている。
また、南海トラフト巨大地震が今年中に起こると予言する人もいる。予知研究を行っている村井俊治元教授は伊豆半島付近より南の太平洋が怪しいと明言している。
電子基準点を16基設置することを予定した。

しかし、科学的予想をあざ笑うがごとく、大阪北部で断層地震が発生した。
それに加えてゲリラ豪雨が西日本各地を襲った。川が逆流する災害も発生した。
東から西に向かう台風も起こった。
突然、首都圏ゲリラ豪雨も発生し、経験のない都民もその恐怖を味わった。

現代では首相が集中豪雨地を視察し、国の災害費用の供出で国の安全が保たれている。
ボランテアの活動で国民がその状況を確認し、どう評価するのかによって政権の良し悪しの基準にも影響し、審判が下る。
次の大地震によって歴史はどう変遷していくのだろう。
2018年(平成30年9月6日)に北海道で強度7の大型地震が発生した。全道で電力の供給が停止に追い込まれた。

当然、インフラもバタバタになり、携帯も電源の補給ができなくなり、旅行客が親や知人に無事を連絡できず困惑している。
NTT東日本では公衆電話を無料にして旅行客などに提供した。
賢明な判断であった。

関係者への状況連絡は精神的な安心につながる。
高度情報化の社会の日本の未来に不安が拡大していく。

日本中、どこにいても地震災害にぶち当たる。対岸の火事ではすまされない。
それらの災害は「想定内の災害」とみるべきである。
現在の住居の場所に地震災害が起こる可能性が常にあることを認識し、BCMの考え方や手法を取り入れて①事前に予防策や代替策を講じる。②発生後の被害を極力押させる手立てを事前に講じておくかどうかで生死を分けるほど重要であると考えなければならない。

NHK総合テレビのクイズバラエティ番組のチコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねよ!」と叱られそうだ。

担当:和田

日本人と地震

日本人の一番怖い物は昔から「地震、雷、火事、親父」という諺がある。
現在、「親父」の方は「妻」だったり、「嫁」であろうか。
「地震」も「のど元過ぎれば熱さを忘れる」となにも起こらなかった如く脳の記憶は忘れていく。日本人の寛容さはどこからきているのだろうか。

平成になってから「阪神淡路地震」「東日本地震」と大きな地震が起きた。その復旧に関連者は日々おわれているが、傍観者でしかない個人は段々記憶の外へと追い出されていきつつある。

「脳」の「海馬」は新しい情報を記録するが、古い情報は「大脳皮質」に納められていく。古い情報に分類されると記憶は変質していくらしい。
日本の地震の記録は416年(允恭5年)の「允恭地震(いんきょうじしん)」からである。文字が伝来されてから記録され残った。以前の地震の記録は存在しない。4世紀後半以前には地震がなかったのだろうか。

599年(推古7年)には「推古地震」が起った。聖徳太子が予測したと言われている。文字を読めた太子は書物から地震の起る原理を知っていた。

日本列島は4つのプレートが押し合い引きあいしながら島国
を造り上げた。だから頻繁に地震は起こっていたはずである。
古代人は地震が起きたら「沈黙」しながらその恐怖に耐え忍んだ。逃げる場所が列島しかない。諦めるしかない。

その内、時間が経過すれば地震の震動が止まり、正常な生活に戻る。被害のあったところは人力と給付金で復旧させていく。
時間が恐怖の記憶を脳から消え去っていく。毎日の生活に戻るようにトラウマを克服していく。
しかし、天の采配はそれなりに責任を問いかけてはいる。

827年(天長4年)には「京都群発地震」がおき、淳和天皇(じゅんなてんのう)は「不徳の詔」を発した。
830年(天長7年)には「天長出羽地震」が起き、淳和天皇は二度も「不徳の表明と援助の詔」を発し、833年(天長10年)には甥の正良親王(まさらしんのう)(仁明天皇)に譲位してしまった。
「地震」は天に近い「天皇」の治世に責任があると考えられていたのだ。皇族も摂関家も黙しているだけである。

一人、菅原道真だけが中国の書物により「地震発生の原理」を理解していたようだ。文官登用試験に「地震の起る原理」を問われて回答している。試験官も知らない回答だったが、それで受かった。後に失脚する遠縁でもある。
 日本人は地震に対して沈黙し、そして忘れることで責任逃れをするしかない。自分には「地震の発生」には関りのない地位である。ただ生き延びるために頑張るしかない。そして、日々の生活に埋没し。次の地震は私の所にはこないと信じている。
しかし、近々に南海トラフ巨大地震」が予想されている。私には関係ないとも言っておれない状況である。

もっと地震について、いや、列島について知識を広げていかなければならない。
「備えよ常に」とは軍国時代の用語であるが、地震についても当てはまる。
頭の片隅に地震が起きたら、どう逃げようか。どう対処すべきか。どう生存を確認しあおうかと相談しておく必要がある。
「天災は忘れたころにやってくる」という諺があるが「忘れる暇もなくやってくるのは確かだ」

文責:和田

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