薬(クスリ)とリスク(副反応、副作用)

新型コロナウィルス感染予防にワクチン接種が進められている。主なものにファイザー製やモデルナ製、アストロゼネカ製などがある。すでに接種を終えた人が多数いるが、副反応がでた人も多くいる。注射部位の痛みや発熱、頭痛、倦怠感、疲労そのほか、アレルギー反応によるアナフィラキシーなどがあげられている。偽ニュースでは、遺伝子が書き換えられるとか、妊娠、出産に影響が出る等がSNSほかに出ている。

今回ワクチン接種でいろいろと副反応が報じられ、リスクを事前に知ることができた。ワクチン接種は、個人の判断によるが、これだけのリスクを考慮しながら多くの人が接種したのは、コロナに対する脅威からではないか。

ワクチンは、1つの薬である。薬の処方にこれだけリスクを考えたことは、少ないのではないか。毎年冬を迎えるにあたり、インフルエンザ予防でワクチン接種をするが、副反応を考えて接種を受けている人は少ないのではないか。

当の私は、インフルエンザワクチン接種で副反応を考えて接収したことはない。また持病で糖尿病や高血圧があるが、これまで医師の指示に従い処方したものを副反応、副作用を考えずに、処方されたものを薬局に行き、薬をもらい受け、服用してきた。

しかし糖尿病では、ある時副作用を聞き、薬局で調べてもらった。私の身体に異常が発生しているのは、薬の影響であることを知った。それで、医師に話をして、その薬を止めてもらうように話した。しかしその医師は、副作用はないと主張し、糖尿病を良くしたいなら、薬を飲むようにと言った。さらに薬局に電話して薬の副作用について、患者に話すなと言った。これでは、話にならないと考え、医師(病院)を変えた。

同じく高血圧の降圧剤でも同じことが発生した。降圧剤ニフェジピンCR錠を処方され、飲んでいたら、足がむくみ、足に力がなくなり、頭が痛くなった。インターネットで副作用について検索したら、私の症状と同じものが出ていた。医師は、薬の副作用は、知っていたが、血圧が高いと脳梗塞になりやすいからと継続して飲むようにと勧められた。しかし私は、飲むのを止めた。その後、脳神経外科の診察を受け、この話をしたら、副作用が出ているなら、服用をやめるのは、正解だと聞いた。その後、降圧剤を勧めた医師の継続した治療をやめた。

これらのことから、私や多くの人は、医師から薬を処方してもらって、副反応、副作用の話を聞かずに服用している場合が多い。

今回ワクチン接種で得た教訓、接種前に副反応を聞き、対応を考えて接種を受ける。

薬は病気を和らげてくれる。しかし、副反応、副作用、これらはリスクである。今後医師から薬を処方されたら、副作用、副反応がないか確認するようにしなければならない。

監視及び測定のための資源の審査

ソフトウェア開発会社の定期審査の前に、品質マニュアルを確認していたら、「7.1.5 監視及び測定のための資源」を適用不可能にしていることに気がついた。

どうしてだろうかと、審査の中で聞いてみたいと思った。

当受審組織は、登録審査から約15年が経過していた。

審査が始まり、まず管理責任者面談になり、確認してみた。登録審査以降、過去審査員、審査機関から適用不可能にしていて何ら問題になっていないという。

監視及び測定の資源は、検査、試験にハード及びソフト的な機器・装置を使用していないと説明があり、審査員、審査機関は、了解しているという。

時間があまりなかったので、個別のプロジェクト審査で確認することにし、管理責任者が同席することになった。

最初のプロジェクトで、スケージュール管理(監視)は、どのようにしているかを尋ねると工程表:ガントチャートが出てきた。

これは、工程を監視しているものですね。

受審組織の担当者は、はい、そうです、とあった。

ソフトウェアの完成度は、どのようにしてみていますか。

開発日程とバグの摘出状況を見るバグ死滅曲線を作成して管理していますとあった。

これら、ガントチャートやバグ死滅曲線が、監視及び測定のための資源ですと話し、皆さんは、監視及び測定のための資源を利用しているのです。

これらは、校正を必要とするものではないが、皆さんは、7.1.5項を適用不可能にしているが、実際は、適用しているのです。

また、「9.1 監視,測定,分析及び評価」と関連してみていくと良いです。

何を監視、測定するかを決めて、どのような手段(ハード的な機器・装置、ソフトの利用、図や表、QC7つ道具等)を説明し、9.1項、7.1.5項を絡めていけば了解されるでしょうと話し、了解を求めた。管理責任者も同席しており、このような話しは、過去から、一度も聞いたことがないという。

有効性評価

2021/7に審査した受審組織では、上司から部下に対する助言、アドバイスを「ワンポイントアドバイス」として管理する制度を設けて、一覧表を作成していた。どんな内容か、一覧表を読んでみたが、小さな指示や大きな指示があり、それらについて簡単な助言(アドバイス)が記載されていた。

必ずしも提出する件数の目標はなかったが、全社的取り組みで、業務のケアレスミスの防止やプロセス間(他部署間)の行き違い防止に役立っていた。いい制度だなと思った。

そこで、再度一覧表を見直した。同じアドバイスはないかを確認した。見た限りでは、同じものはなかった。

受審組織にこの制度の有効性をどのようにみていますかと聞いた。すると今のところ、有効性を必ずしもみていないとあった。ISO9001:2015 ではパフォーマンスを求めており、有効性を確認するように仕組みを追加したらどうかと提案した。

また、有効性をあげるために活用方法を検討するのも良いだろう。一覧表を基に部下への教育資料として活用することも検討に値する。

有効性の1つに同じようなアドバイスがないかをみていくのも良いだろう、定着して、効果を上げていると評価するのも良いのではないかと。また、業務の生産性、金額換算等でみていくのも良いのではないかと考えながら、審査の改善の機会にした。受審組織も受け入れてくれた。

品質マニュアルは、品質マネジメントシステムの仕様書か

審査では、前回の指摘事項を確認することになっている。下記の指摘について、指摘のいきさつや、どのように改善したのか確認したかった。

指摘事項(改善の機会)

「品質マニュアルは、QMSの仕様書です(JIS Q 9000:2015 3.8.8項参照)が、2015年版規格の内容の多くは反映されておりません。新規格が運用されていない事例が観察されるため、QMへの規格内容の反映の必要性の検討及び/又は新規格の要員への教育訓練の必要性検討の余地があります。」

審査初日に、管理責任者に確認した。

前回の審査員は、品質マニュアルは、ISO9000:2015 品質マネジメントシステムーー基本及び用語 を引用して、品質マニュアルは、ISO9001:2015 品質マネジメントシステム 要求事項 を引用し、仕様書に即して要求事項をそのまま記述し、組織の適用、手順書他を付け加えて作成するものです とあったという。品質マニュアルは、要求規格を丸写しして、当組織の手順書、記録などを付け加えて作成するとあり、それに、改善して再作成してくださいということであった。

私がいただいた当組織の品質マニュアルは、第1章適用範囲、第2章計画、第3章運用、第4章評価・分析、第5章対策 となっていた。管理責任者に品質マニュアルは、改訂したのですか と確認したところ、新しい審査員が来たとき、確認してから行おうと改訂しませんでしたとあった。そして、私に品質マニュアルは、要求事項を丸写ししたものを作成しなければならないのですかと聞いてきた。

私は、品質マニュアル作成は、規格の要求事項からなくなった、従って、品質マニュアルは、作成してもよいし、作成しなくてもよいですね。また、作成するにしても規格要求事項を丸写しするかどうかは、組織の自由です。皆さんの品質マニュアルは、社内で検討し、このように作成しようと決めたのであれば、それでよいです。

管理責任者は、審査機関の規格説明会で、上記のように聞きました。従って、私たちの組織では、審査機関に渡した、今回私がいただいた品質マニュアルを作成しました。規格要求事項に従ったものではなく、当社の実施すべきことをまとめたものにしました。

前回の審査員との間では、このことを説明しましたか、と聞いた。

管理責任者は、審査員に貴社説明会で聞いたことを話し、品質マニュアルは、規格要求事項ではなくなったので自由に作成してよいと聞き、社内で検討した結果がこのようになったのですと説明した。

しかし審査員は、ISO9000:2015 品質マネジメントシステムーー基本及び用語 の品質マニュアルの用語の定義、品質マネジメントシステムの仕様書 だから、規格の要求事項をそのまま記述し、貴社の手順書、記録などを追加して作成してください とあった。

これについて、管理責任者と審査員のあいだで平行線となった。組織幹部の意見で、審査員の意見を聞いて改善していこうとなり、改善の機会を受け入れた。

管理責任者は、品質マニュアルを改訂せず、今回審査員私の意見を聞いてから、改訂するかどうか決めたいと考えているとあった。そして私の意見を確認してきた。

私の考えは、上記の通りです。品質マニュアルは、作成しても良いし、作成しなくても良いです。作成するとき、どのように作成するかは、組織の自由です。貴社が、作成したもので良いと考えます。付け加えるならば、品質マニュアルは、誰が読むのか、読む人にわかりやすくなっているかが大事だと思います、と話した。

審査員は、品質マニュアルに要求事項に従った記述、規格要求事項のデッドコピーを未だ求めているのかと、非常に古い型の審査員であろう。1994年版までは、これで良かったが、2000年版から規格要求事項のデッドコピーを求めていない。その後の2008年版、2015年版しかりである。無用な要求(改善の機会)は、しない方が良く、組織に無用な混乱を及ぼすことになる。

また、基本と用語にあるが、品質マニュアルが、品質マネジメントシステムの仕様書と位置づけるなら、要求事項に明確に要求されるだろう。しかし要求されていないので、あくまで、参考の位置づけで良いのではないか。それとも、日本語への翻訳で十分意図したものになっていなかったのではないか。

注)ISO9001:2015 品質マネジメントシステムーー要求事項の引用規格としてISO9000:2015 品質マネジメントシステムーー基本及び用語 があるが、審査で使用するのものではない。

マネジメントレビュー開催通知にISO9001:2015の 9.3項により招集と書かれていた

管理責任者インタビューで、マネジメントレビューの結果を確認することにした。

管理責任者にマネジメントレビューをどのように実施しましたかと聞いた。すると、下記のような資料が提出された。

  • マネジメントレビュー開催通知
  • マネジメントレビューの資料
  • マネジメントレビュー議事録

資料が提示されたので、一つ一つ見ていくことにした。

 

まず、開催通知から確認した。開催日、時間及び内容が書かれていた。出席者の一覧があった。出席者一覧の最後に書かれていたのは、「ISO9001:2015の9.3項に従い、招集する、出席依頼者は、全員出席すること」とあった。未だかって、開催通知にISO規格要求項目を書いて、出席依頼していたのを見たのは、初めてであった。また、これは、警察官が犯罪者を取り締まるにあたり、「法令○条に従い、逮捕する」と同じではないかと、違和感を感じた。それで、なぜこのように書いたのですかと質問してみた。

 

管理責任者から、出席が悪いのです。何かと忙しいと言って欠席するのです、とあった。また、品質保証部門の会議には、出席者が喜んでくるものはなく、強制的に出てもらうものが多いのです。

そうか、苦労してマネジメントレビューを実施しているのだなぁー。なぜ、出席しないのだろうか。

 

マネジメントレビューの資料を確認してみた。9.3.2項のインプットに従い、全てを網羅していた。また、議事録を確認した。特に社長指示事項を見た。特に目新しいものはなく、包括的なもので、具体的な指示はなかった。マネジメントレビューは、年1回開催となっていた。

 

これでは、マネジメントレビューが役立っているとは、思えなかった。では、どのようにすれば、効果的なものにすることができるか、頭の中で考え始めた。管理責任者にどのように説明すれば良いか、9.3の条項の内容を思い浮かべながら、話した。規格は、マネジメントレビューは一度に全てを実施するように要求していない。また回数も指定していない。年に一回でも良いが、月に、週に一回でも良い。運用方法を変更することにより、必要な出席者が全て出てくるのではないか。

 

9.3,2項の要求事項

a)「前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況」は、全ての会議で行われるものである。

b)「品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の課題の変化」は、貴社の予算会議又は経営会議で検討されているのではないですか。予算会議で各部門の目標達成のために外部・内部の課題を書いているのではないですか。前期の結果から今期の目標を記載するにあたり、変化を記載しているのではないですか。予算会議は、必ず期の初めに実施しているのではないですか。

c)は、細分化されているが、1) 「顧客満足及び密接に関連する利害関係者からのフィードバック」は、営業会議又は経営会議で実施されているのでないか。顧客の状況及び利害関係者からのフィードバックは、具体的には、何かを考えて、どの会議が該当するかを考えれば良いです。利害関係者に法令・規制事項を入れているのであれば、この変更は、営業会議や経営会議で報告されているのではないですか。2) 「品質目標が満たされている程度」は、品質管理委員会で報告されているのではないか。このように考えていけば、年に1回管理責任者が資料をまとめて、経営者及び役員を招集しなくてもできるのではないですか。

 

管理責任者から、目から鱗で、初めてこのように考えることを聞きました。過去の審査員に聞いたところ、マネジメントレビューは、年に1回社長ほか役員を集めて実施すると聞き、集められなかったのは、管理責任者の責任です、と言われてきました。このようなやり方なら、管理責任者の責務が少なくなったようだ、肩の荷が下りたというか、このようなやり方でやっていきます。心配なのは、次に来る審査員が、このようなやり方で承知するか、心配です。

 

私が、話したように規格には、具体的どのようにレビューするか、頻度や一度の会議又は複数の会議でやるかとは、要求していないことを説明することです。審査員の一方的な解釈ではなく、規格に従って良く相談することと、効果的に実施することを考えた方が良いです。

このように話したが、なかなか自信がないようであった。確かに審査員と渡り合って、堂々と審査員に対して、審査員が間違っていますよということは難しいかもしれない。

真っ赤な品質マニュアル

2017年11月審査の受審組織から送られてきた品質マニュアルは、表紙は、黒色で書かれていたが、本文は、すべて赤字であった。確かに「真っ赤な品質マニュアル」であった。「真っ赤な品質マニュアル」は、読みづらい面が多々あった。それにしてもこんな「真っ赤な品質マニュアル」を作成して送ってきたのだろうか。

私が所属している審査機関では、受審組織との間で、審査資料を受け取っている。審査員が直接受審組織から資料を受け取ることはない。移行審査4か月前に受け取ることになっている。しかし当組織からの資料は、遅れてきていた。たぶん組織から送られてくるのが、遅かったのであろう。

11月に審査に行ったとき、なぜ「真っ赤な品質マニュアル」にしたのか、理由を聞くことにしようと、審査計画書を作成し、受審組織に了解を取り、審査機関に提出・承認を受け、審査機関から、受審組織に送られた。審査準備で「真っ赤な品質マニュアル」をプリントアウトし、そのほかの審査資料も併せて、プリントアウトして持って行くことにした。

審査当日、管理責任者インタビューでまず「真っ赤な品質マニュアル」の理由を率直に聞いた。管理責任者から、次の話があった。ISO9001:2015では、品質マニュアルは、要求事項ではなくなったので、作成していなかった。しかし審査機関から品質マニュアルの提出を求められ、品質マニュアルを作成していないと答えた。しかし品質マニュアルを提出してくださいと、再三要求された。それで抵抗の気持ちをかねて、「真っ赤な品質マニュアル」を作成し、提出期限を遅らせて送ったという。

確かに当審査機関は、品質マニュアルを求めている。一応品質マニュアルがない組織は、審査に必要な資料を送って欲しいと言っていると聞いている。それが品質マニュアルを提出してくださいとなったのであろう。この「真っ赤な品質マニュアル」は、ISO9001:2008で多くの受審組織が品質マニュアルとして、記載した、4.1から10.3までのデッドコピーであった。注記までもコピーされていた。確かにこのような品質マニュアルが多いことは、事実だ。

ISO9001:2000が出たとき、品質マニュアルは要求事項にあったが、3項目の記述要求であった。要求事項通り3項目のみを記載した受審組織は、少なかった。ある審査機関では、3項目をA3用紙1枚に記載した品質マニュアルを推奨していた。しかしこれは、横に広がらなかった。多くの受審組織は、過去1994版と同様、規格要求事項のコピーであった。確かに94版では、規格のデッドコピーと同様なものを求めていた。それが審査をやりやすくし、同じ手順を求めるものであった。しかし00版からは、規格要求事項からの審査でなく、受審組織の風土、文化を尊重し、受審組織のプロセス、手順に従って行うようにとあった。

広く考えれば、QMS(品質マネジメントシステム)だけでなく、EMS(環境マネジメントシステム)、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)等は、マニュアルを要求していない。しかし多くの受審組織は、マニュアルを作成している。それは、規格のデッドコピーが多い。審査機関、審査員は、審査時網羅性を考えた場合、いいものだ。ある面、審査機関が受審組織のマネジメントシステムの構造を画一化させたり、文書類を規格の箇条と一致させる、規格の特定の用語を使用させる 等につながっている。これらは、各マネジメントシステム要求事項の序文に、これらを求めるものではないと書かれたものに違反している。

規格要求事項のデッドコピー等を求められた受審組織から審査機関へのクレームはない。受審組織は、審査を受け、登録し、登録証を維持するために、審査機関の言いなりになっていないだろうか。品質マニュアルの側面から見たが、本当に役に立つ審査、審査機関として適切か、を受審組織としてみていく必要があろう。受審組織は、審査の質を上げていくためにもっと強く、審査機関にもの申す、改善を働きかける必要があろう。審査機関も要求事項に忠実に、受審組織に負担をかけないようにしていくことが求められるのではないだろうか。

注:ISO17021では、審査員の知識、技能を要求している。専門性をもった審査員が受審組織に行き、審査することを求めている。従って、ISO9001の要求事項は、受審組織では、どのようになっているかの大まかなものは、知っているはずである。

審査の現場における問題点・課題

受審組織と認証機関とのやり取りや関係から、ベテラン審査員からの課題提供です。
まずは、以下(カテゴリーB)をお読みください。

【 カテゴリーB
7月にOA機器のレンタル会社へ審査に行った。審査に行く前に前回の指摘事項について確認していくことにしている。指摘事項は、4件あった。そのうちの2件は、本当にカテゴリーB(軽微な不適合)なのかと疑問に感じるものであった。
a)OA機器の保守・修理プロセスに関連する、次の力量が特定できませんでした。
①OA機器のクリーニング作業/作業員に必要な力量
②出荷前確認者に必要な力量/任命基準(QA機器出荷の許可者)
(指摘の規格要求事項:7.2)
b)QMSのパフォーマンスと有効性について、マネジメントレビューにおいてトップインタビューにより評価されていることを確認しましたが、評価結果が記録されていませんでした。
(指摘の規格要求事項:9.1.1)
a)、b)の是正処置は、どのようになっているだろうかと期待を持ってみた。
a)力量認定表にてOA機器のクリーニング作業員および出荷前確認者の力量を定めた。
b)マネジメントレビューからのアウトプットに評価の欄を追加し、マネジメントレビュー時に評価をし、適切な文書化した情報を保持するようにする。
そうか、審査した審査員は、a)は、クリーニング作業員及び出荷前確認者について、力量評価表に必要な力量を明確にし、資格認定することを求めたようだ。b)では、マネジメントレビューのアウトプットに評価結果の欄を、追加とあるように評価結果を明示するように要求したようだ。審査に行き、確認することにした。
管理責任者インタビューで、前回指摘事項カテゴリーBについて、確認した。するとa)及びb)について、是正処置計画書を提出したが、社内で検討した結果、資格認定表は、更新した(是正処置計画書提出のまま)が、資格認定を行っておらず、マネジメントレビューのアウトプットについても、フォーマットの変更(評価欄追加)を是正処置計画書に書いたが、実際には行っていなかった。
なぜだろうと管理責任者へ確認した。a)については、OA機器のクリーニング作業員及び出荷前確認者は、社員が行っており、OA機器がきれいになっているかであり、何かが付着していないかを見ており、出荷前確認者は、OA機器が稼動するかどうか、電源を入れて動くかどうかを見ているだけであるという。従って、クリーニング作業員及び出荷前確認者ともに入社後1ヵ月のOJTでできるようになるという。OJTの結果、不適な人は、やらせていないという。確かに聞いていると、普通の人であれば、できることではないかと感じた。またb)についてもいちいち評価して、どうとか書くよりも、問題があれば、それなりに指示があり、対処することにしているではないかとあった。
しかし、前回の審査でなぜ、カテゴリーBを受けたのであろうか。管理責任者へ、更に聞いてみた。すると規格要求事項の説明を受け、クリーニング作業員、出荷前確認者は、「品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務」を行っているのではないかと迫られ、「確かにそうだ」といったという。マネジメントレビューの結果について、「品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性を評価」をした結果が良かったのか、どうかの評価結果がないことは、「評価したことにならないし、適切な文書化した情報の保持にならない」と言われたという。
審査員と受審組織との間に大きな違いがあるようだ。私が思うには、a)については、規格では、力量を求めているが、果たして力量評価表で規定し、資格認定する必要があるだろうか。ここで扱っているOA機器は、パソコンや複写機であり、一般の人は、扱ったことがあるであろうし、きれいかどうかの判断、電源が入ったかどうかはわかるであろう。従って、資格認定表に書くまでもなく、ましてや資格認定をする必要はないのではないか。審査の中で、顧客から苦情が来ているか、直接クリーニング作業員、出荷前確認者がやっている姿を見て間違いやすいかどうかを確認すべきではないか。マネジメントレビューでインプット情報について検討した結果(評価)が良かったかどうか、もし問題があれば、次に向けた課題、ペンディング事項となっているだろう。これがないということは、問題がなく、良い評価であったのではないか。「便りがないことは良い便りだ(元気なことだ)」という、ことわざもあるではないか。
前回の審査で、当該審査員から規格要求事項を突き付けられ、何も反論できなかったようだ。しかし審査後社内で検討した結果、「そこまでは、」となった時、審査機関に確認を行ったかと聞いたが行っていないという。受審組織と審査機関は、対等の立場であり、審査をよりよくするためには、審査の状況、現場の状況を率直に話していく必要があるのではないか、審査員は、受審組織の状況、顧客が求めている品質状況(顧客からのクレーム情報)を考慮した上で審査を進める、また受審組織の文化、風土を考慮していくことが必要であろう。受審組織及び審査員のこのような行為から、受審組織の品質マネジメントシステムがより堅固なものになっていくであろう。
注 ISO9001:2015 より、抜粋

7.5 文書化した情報
7.5.1 一般
組織の品質マネジメントシステムは,次の事項を含まなければならない。
a) この規格が要求する文書化した情報
b) 品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した,文書化した情報

注記 品質マネジメントシステムのための文書化した情報の程度は,次のような理由によって,それぞれの組織で異なる場合がある。
組織の規模,並びに活動,プロセス,製品及びサービスの種類
- プロセス及びその相互作用の複雑さ
人々の力量
(太字は、著者による)                             】

お読みいただいたご感想はいかがでしたか?
過度な指摘事例など、その実状から次のような課題が考えられます。

① 受審組織が不当な指摘に対して反論できる力量が不足、規格に対する理解度不足。
行き過ぎた指摘に対して社として正々堂々と反論してよい。資格認定など必要ない
と考えていると。(組織の課題)
② 審査員が持論を展開し、受審組織に押し付けているように見える。(審査員の課題)
③ 審査員の力量にバラツキがあり、認証機関としてそのバラツキを
を低減させるための勉強会がどの程度実施されているか?(認証機関の課題)
というような課題が浮かびあがってきます。」

本件につき、ご意見やコメントをお持ちの方は、日本BCM協会 事務局にお聞かせください。その際、当協会ホームページの「問い合わせ」をご利用ください。

事務局  佐野 興一

「審査の話」:手順について【ISO9001】

審査が終わって、報告書を作成するにあたり、管理責任者の確認を毎回、行っている。確認が終わって、管理責任者の審査に対する疑問や品質マネジメントシステム(QMS)に関する疑問等を聞くことにしている。

いくつかの顧客では、次のような疑問があった。
「QMSを軽くしたい、どのようにしたらいいか」と聞かれる。
「“軽くする”とは、どんなことですか。」
「QMSの手順が重い、手順、規定が多すぎる」と前回及び前々回の審査員から言われているのです」
「そうですか、それでどうしているのですか」
「社内で検討しているのですが、どの規定をなくしたらよいのか、どの規定を簡略化したらよいのか、わからないのです。」
「審査員が指摘したのであれば、審査員に聞いてみればよいのではないですか。」
「審査員に聞いたのですが、審査員はコンサルをしてはいけないことになっている、皆さんで検討して下さい、と言われているのです。」
「無責任な審査員ですね」

このような会話のあとに、次のように話した。
1.手順、規定類は、組織の文化、風土に従って、作成されたものであり、審査員が、重い・軽いとは、いえないものである。もし手順、規定類に不適合があり、改善事項があれば、具体的に指摘すればよいのではないか。
2.手順は、ISO9000:2015では、次のように定義している。
手順(procedure):活動又はプロセス(3.4.1)を実行するために規定された方法。
注記 手順は、文書にすることもあれば、しないこともある。

活動又はプロセスを実行するために規定された方法であり、それは、下記のようなものがある。
a)文書で書かれた規定類
b)プロセスフロー
c)活動するための計画書及び活動結果を記録する様式類
d)コンピュータシステム
e)手順を教育するためのテキスト類
f)OJTの結果、又は組織内の慣習

これらを考慮して、組織ではどのような手段が、要員に対して教育し、理解させ、実行しやすいかを考えて、手順の文書化の程度を決めていけばよいのではないか、と話すことにしている。
文書のみでは、わかりぬくい面があれば、見える化で、プロセスフローでもよい。計画書・記録の様式であってもよいのではないか。ある組織では、コンピュータシステムに従い実施すれば、適切な結果を出せる仕組みを構築しているものがあり、当然活動の結果もコンピュータシステムに自動的に入力されるシステムを構築している例がある。教育を受け、習熟したもののみがラインで作業している場合、教育テキストが規定・手順となっている。
このように考えて、文書化した規定類だけでなく、柔軟に手順について、規定を上記の中から、組織に適したものを選んでいけばよいのではないか。

ISO9001:2015における品質マニュアルについて

ISO9001:2015版への移行が始まってから、約1年半が経過する。
移行審査は、ようやく始まった感がする。
その中で、2015版では、品質マニュアルは、要求事項ではなくなった。しかし14001(環境マネジメントシステム)や27001(情報セキュリティマネジメントシステム)と同じく要求事項ではないが、審査機関では、品質マニュアルを暗に求めている。コンサルタントや雑誌なども品質マニュアルを作成することを推奨している。

私は、6組織の移行審査を実施した(2017年4月現在)。
規格要求事項と同じく4.1から10.3まで、そのまま書いているものが、5組織あった。
1社のみ、品質マニュアルに、文書管理やマネジメントレビュー、内部監査等の手順を書いたものがあった。

過去多くの組織は、規格の要求事項4.1から8.5.3までをそのまま書いている品質マニュアルが多かった。
今なお、それを踏襲しているようだ。
なお、後者は、品質マニュアルは作成していなかったが、審査機関から品質マニュアル又は品質マニュアル相当を再三、求められ、手順をいくつかまとめたものを品質マニュアルとして提出したと聞いた。

過去、ISO9001:2008での審査時、品質マニュアルは、どのように作成するとよいかを尋ねた。
当組織は、規格の要求事項4.1から8.5.3までをそのまま書いていた。まず最初に品質マニュアルは、読まれているかと聞いた。
すると、管理責任者以外は、読んでいないのではないかとあった。
誰のために作成しているのですかと嫌味かもしれないが、聞いてみた。
多少時間をおいて、審査機関、審査員のために作成しているのかもしれないとあった。

いや、審査員は、何回も審査に行き、規格要求事項は、頭の中にあり、そらんじているぐらいだ。
従って、皆さんが、どんな規定、手順書を作っているかを知りたい。
それも文書・記録の一覧表があり、それでわかる。審査員は、審査対象組織に対しては、専門性を付与されており、どんな文書・記録がなければならないかもわかっている。
そして、皆さんの業務がどのように進められているかもおおよそ知っている。

しかしこれらを再確認したい。それは、ISO9001:2008で、品質マニュアルに対する要求事項b)品質マネジメントシステムについて確立された“文書化された手順”又はそれらを参照できる情報、c)品質マネジメントシステムのプロセス間の相互関係に関する記述 ではないかと話した。
そして、認証登録するうえで、a)品質マネジメントシステムの適用範囲,除外がある場合には,除外の詳細、及び除外を正当とする理由(1.2参照) が必要なんですと話した。

2015版では、品質マニュアルは、要求事項ではなくなった。
それは、審査員は組織の業務内容を熟知し、文書・記録等がどうあらねばならないかを知っているからであろう。

また従来のa)は、「4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」で、審査の中で、確認することになっている。またこの内容は、変化する4,1、4.2等を踏まえて、毎回審査することになっており、その点が従来と違っている。

このように考えた時、品質マニュアルは、必要か、不必要か、又は必要ならどのように作成すべきかを検討しなければならない。
多くの審査機関が品質マニュアルを求めている。
組織は、認証を継続していく上で、断るのは、難しい。

それで、審査機関向けに作成しては、どうだろうか。審査機関は、審査計画書を作成して、審査をすることになっている。
従って、審査計画書ができ、審査するには、どんな内容があればよいのだろうか。
それは、組織は、過去の経験からわかることだろう。

文責:藤井 敏雄(認証システム見直しセミナー講師)

特定非営利活動法人日本BCM協会