審査が終わって、報告書を作成するにあたり、管理責任者の確認を毎回、行っている。確認が終わって、管理責任者の審査に対する疑問や品質マネジメントシステム(QMS)に関する疑問等を聞くことにしている。
いくつかの顧客では、次のような疑問があった。
「QMSを軽くしたい、どのようにしたらいいか」と聞かれる。
「“軽くする”とは、どんなことですか。」
「QMSの手順が重い、手順、規定が多すぎる」と前回及び前々回の審査員から言われているのです」
「そうですか、それでどうしているのですか」
「社内で検討しているのですが、どの規定をなくしたらよいのか、どの規定を簡略化したらよいのか、わからないのです。」
「審査員が指摘したのであれば、審査員に聞いてみればよいのではないですか。」
「審査員に聞いたのですが、審査員はコンサルをしてはいけないことになっている、皆さんで検討して下さい、と言われているのです。」
「無責任な審査員ですね」
このような会話のあとに、次のように話した。
1.手順、規定類は、組織の文化、風土に従って、作成されたものであり、審査員が、重い・軽いとは、いえないものである。もし手順、規定類に不適合があり、改善事項があれば、具体的に指摘すればよいのではないか。
2.手順は、ISO9000:2015では、次のように定義している。
手順(procedure):活動又はプロセス(3.4.1)を実行するために規定された方法。
注記 手順は、文書にすることもあれば、しないこともある。
活動又はプロセスを実行するために規定された方法であり、それは、下記のようなものがある。
a)文書で書かれた規定類
b)プロセスフロー
c)活動するための計画書及び活動結果を記録する様式類
d)コンピュータシステム
e)手順を教育するためのテキスト類
f)OJTの結果、又は組織内の慣習
これらを考慮して、組織ではどのような手段が、要員に対して教育し、理解させ、実行しやすいかを考えて、手順の文書化の程度を決めていけばよいのではないか、と話すことにしている。
文書のみでは、わかりぬくい面があれば、見える化で、プロセスフローでもよい。計画書・記録の様式であってもよいのではないか。ある組織では、コンピュータシステムに従い実施すれば、適切な結果を出せる仕組みを構築しているものがあり、当然活動の結果もコンピュータシステムに自動的に入力されるシステムを構築している例がある。教育を受け、習熟したもののみがラインで作業している場合、教育テキストが規定・手順となっている。
このように考えて、文書化した規定類だけでなく、柔軟に手順について、規定を上記の中から、組織に適したものを選んでいけばよいのではないか。