「認証システムの見直し」セミナー

来る平成29年10月24日(火)、標題のセミナーを開催させていただきます。
一昨年、品質マネジメントシステム(QMS)が規格改正されたため、その移行に関するセミナーとなります。
今回もQMSの主任審査員の方を講師にお招きして、改正のポイントをご説明いただきます。

日程等は以下の通りです。

1.開 催 日: 2017年10月24日(火)
2.時   間: 14:00~15:00  受付開始 13:45より
3.場   所: 大田区産業プラザPIO F会議室 6階
(1)参加費: 無料  
(2)定員 : 先着20名限定(QMS認証取得企業対象)

詳しくはこちらのチラシをご覧ください。
規格改正セミナ-(蒲田)10/24

お申込は、当HPお問い合わせ(下記リンクとなります)からお願いします。
https://www.jbcmi.org/contact

審査の現場における問題点・課題

受審組織と認証機関とのやり取りや関係から、ベテラン審査員からの課題提供です。
まずは、以下(カテゴリーB)をお読みください。

【 カテゴリーB
7月にOA機器のレンタル会社へ審査に行った。審査に行く前に前回の指摘事項について確認していくことにしている。指摘事項は、4件あった。そのうちの2件は、本当にカテゴリーB(軽微な不適合)なのかと疑問に感じるものであった。
a)OA機器の保守・修理プロセスに関連する、次の力量が特定できませんでした。
①OA機器のクリーニング作業/作業員に必要な力量
②出荷前確認者に必要な力量/任命基準(QA機器出荷の許可者)
(指摘の規格要求事項:7.2)
b)QMSのパフォーマンスと有効性について、マネジメントレビューにおいてトップインタビューにより評価されていることを確認しましたが、評価結果が記録されていませんでした。
(指摘の規格要求事項:9.1.1)
a)、b)の是正処置は、どのようになっているだろうかと期待を持ってみた。
a)力量認定表にてOA機器のクリーニング作業員および出荷前確認者の力量を定めた。
b)マネジメントレビューからのアウトプットに評価の欄を追加し、マネジメントレビュー時に評価をし、適切な文書化した情報を保持するようにする。
そうか、審査した審査員は、a)は、クリーニング作業員及び出荷前確認者について、力量評価表に必要な力量を明確にし、資格認定することを求めたようだ。b)では、マネジメントレビューのアウトプットに評価結果の欄を、追加とあるように評価結果を明示するように要求したようだ。審査に行き、確認することにした。
管理責任者インタビューで、前回指摘事項カテゴリーBについて、確認した。するとa)及びb)について、是正処置計画書を提出したが、社内で検討した結果、資格認定表は、更新した(是正処置計画書提出のまま)が、資格認定を行っておらず、マネジメントレビューのアウトプットについても、フォーマットの変更(評価欄追加)を是正処置計画書に書いたが、実際には行っていなかった。
なぜだろうと管理責任者へ確認した。a)については、OA機器のクリーニング作業員及び出荷前確認者は、社員が行っており、OA機器がきれいになっているかであり、何かが付着していないかを見ており、出荷前確認者は、OA機器が稼動するかどうか、電源を入れて動くかどうかを見ているだけであるという。従って、クリーニング作業員及び出荷前確認者ともに入社後1ヵ月のOJTでできるようになるという。OJTの結果、不適な人は、やらせていないという。確かに聞いていると、普通の人であれば、できることではないかと感じた。またb)についてもいちいち評価して、どうとか書くよりも、問題があれば、それなりに指示があり、対処することにしているではないかとあった。
しかし、前回の審査でなぜ、カテゴリーBを受けたのであろうか。管理責任者へ、更に聞いてみた。すると規格要求事項の説明を受け、クリーニング作業員、出荷前確認者は、「品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務」を行っているのではないかと迫られ、「確かにそうだ」といったという。マネジメントレビューの結果について、「品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性を評価」をした結果が良かったのか、どうかの評価結果がないことは、「評価したことにならないし、適切な文書化した情報の保持にならない」と言われたという。
審査員と受審組織との間に大きな違いがあるようだ。私が思うには、a)については、規格では、力量を求めているが、果たして力量評価表で規定し、資格認定する必要があるだろうか。ここで扱っているOA機器は、パソコンや複写機であり、一般の人は、扱ったことがあるであろうし、きれいかどうかの判断、電源が入ったかどうかはわかるであろう。従って、資格認定表に書くまでもなく、ましてや資格認定をする必要はないのではないか。審査の中で、顧客から苦情が来ているか、直接クリーニング作業員、出荷前確認者がやっている姿を見て間違いやすいかどうかを確認すべきではないか。マネジメントレビューでインプット情報について検討した結果(評価)が良かったかどうか、もし問題があれば、次に向けた課題、ペンディング事項となっているだろう。これがないということは、問題がなく、良い評価であったのではないか。「便りがないことは良い便りだ(元気なことだ)」という、ことわざもあるではないか。
前回の審査で、当該審査員から規格要求事項を突き付けられ、何も反論できなかったようだ。しかし審査後社内で検討した結果、「そこまでは、」となった時、審査機関に確認を行ったかと聞いたが行っていないという。受審組織と審査機関は、対等の立場であり、審査をよりよくするためには、審査の状況、現場の状況を率直に話していく必要があるのではないか、審査員は、受審組織の状況、顧客が求めている品質状況(顧客からのクレーム情報)を考慮した上で審査を進める、また受審組織の文化、風土を考慮していくことが必要であろう。受審組織及び審査員のこのような行為から、受審組織の品質マネジメントシステムがより堅固なものになっていくであろう。
注 ISO9001:2015 より、抜粋

7.5 文書化した情報
7.5.1 一般
組織の品質マネジメントシステムは,次の事項を含まなければならない。
a) この規格が要求する文書化した情報
b) 品質マネジメントシステムの有効性のために必要であると組織が決定した,文書化した情報

注記 品質マネジメントシステムのための文書化した情報の程度は,次のような理由によって,それぞれの組織で異なる場合がある。
組織の規模,並びに活動,プロセス,製品及びサービスの種類
- プロセス及びその相互作用の複雑さ
人々の力量
(太字は、著者による)                             】

お読みいただいたご感想はいかがでしたか?
過度な指摘事例など、その実状から次のような課題が考えられます。

① 受審組織が不当な指摘に対して反論できる力量が不足、規格に対する理解度不足。
行き過ぎた指摘に対して社として正々堂々と反論してよい。資格認定など必要ない
と考えていると。(組織の課題)
② 審査員が持論を展開し、受審組織に押し付けているように見える。(審査員の課題)
③ 審査員の力量にバラツキがあり、認証機関としてそのバラツキを
を低減させるための勉強会がどの程度実施されているか?(認証機関の課題)
というような課題が浮かびあがってきます。」

本件につき、ご意見やコメントをお持ちの方は、日本BCM協会 事務局にお聞かせください。その際、当協会ホームページの「問い合わせ」をご利用ください。

事務局  佐野 興一

「審査の話」:手順について【ISO9001】

審査が終わって、報告書を作成するにあたり、管理責任者の確認を毎回、行っている。確認が終わって、管理責任者の審査に対する疑問や品質マネジメントシステム(QMS)に関する疑問等を聞くことにしている。

いくつかの顧客では、次のような疑問があった。
「QMSを軽くしたい、どのようにしたらいいか」と聞かれる。
「“軽くする”とは、どんなことですか。」
「QMSの手順が重い、手順、規定が多すぎる」と前回及び前々回の審査員から言われているのです」
「そうですか、それでどうしているのですか」
「社内で検討しているのですが、どの規定をなくしたらよいのか、どの規定を簡略化したらよいのか、わからないのです。」
「審査員が指摘したのであれば、審査員に聞いてみればよいのではないですか。」
「審査員に聞いたのですが、審査員はコンサルをしてはいけないことになっている、皆さんで検討して下さい、と言われているのです。」
「無責任な審査員ですね」

このような会話のあとに、次のように話した。
1.手順、規定類は、組織の文化、風土に従って、作成されたものであり、審査員が、重い・軽いとは、いえないものである。もし手順、規定類に不適合があり、改善事項があれば、具体的に指摘すればよいのではないか。
2.手順は、ISO9000:2015では、次のように定義している。
手順(procedure):活動又はプロセス(3.4.1)を実行するために規定された方法。
注記 手順は、文書にすることもあれば、しないこともある。

活動又はプロセスを実行するために規定された方法であり、それは、下記のようなものがある。
a)文書で書かれた規定類
b)プロセスフロー
c)活動するための計画書及び活動結果を記録する様式類
d)コンピュータシステム
e)手順を教育するためのテキスト類
f)OJTの結果、又は組織内の慣習

これらを考慮して、組織ではどのような手段が、要員に対して教育し、理解させ、実行しやすいかを考えて、手順の文書化の程度を決めていけばよいのではないか、と話すことにしている。
文書のみでは、わかりぬくい面があれば、見える化で、プロセスフローでもよい。計画書・記録の様式であってもよいのではないか。ある組織では、コンピュータシステムに従い実施すれば、適切な結果を出せる仕組みを構築しているものがあり、当然活動の結果もコンピュータシステムに自動的に入力されるシステムを構築している例がある。教育を受け、習熟したもののみがラインで作業している場合、教育テキストが規定・手順となっている。
このように考えて、文書化した規定類だけでなく、柔軟に手順について、規定を上記の中から、組織に適したものを選んでいけばよいのではないか。

土地条件図を使わなくても地盤の強弱はわかる!?

前回、土地条件図を使って地盤を調べるという方法をご紹介しました。
これは非常に有用な方法なのですが、一部地盤までは掲載されていないと思われる地域もあるようです。
そのような地域では使用することができませんし、使うのは面倒という方もいらっしゃるでしょう。

では他に方法がないのかというと、そうでもありません。
非常に簡単な方法で、ある程度知ることが出来ます。

そのやり方とは・・・地名をチェックすることです。
あまりご存じないかもしれませんが、実は地名は地域災害と密接に関わっていることが少なくありません。
市町村合併等でカッコいい名称に変更していたりすると分からなくなってしまいますが、そうでない地域は、地名をみればある程度推測が出来ます。
特に、水害と関係のある地域は、昔の方がそれを連想できる地名にしていることが多いのです。

水、川、沢、沼、池、谷・・・等々、水にまつわる地名がつけられている地域は、多くが水害も気をつけたほうが良い地域です。
水を連想させる橋なども要注意ですね。
近くにありませんか?
そういう地名。
近くに川(例:鶴川)があったり、池を埋め立てた場所だったり(例:池袋)、そういう場所は、比較的地盤が弱いことが多いです。

他にも、柿のように、欠きの当て字という形でつけられていることもあります。
※柿の場合、本当に柿がよく取れるため柿となっている場合もあります。
吉もそうですね。
葦の当て字にされていることがあります(例:吉原)。

最近はコンクリートで埋められていて分からなくなってしまいましたが、地面の土や岩の種類や植物の植生からもある程度知ることが可能です。
例えば、昔は柳といえば、川沿いに植えられていたものです。
これは、柳が水をより必要とする植物であるためといわれています。
だから、柳の下に蛙がいたりするわけです。

地名では分からなくなったところでも、神社である程度分かることもあります。
東工大の桑子先生の研究で、東日本大震災の際、国津神系の神様を祀っている神社は、天津神系の神様を祀っている神社より被害が少なかった(というよりほとんどなかった)という論文があります。
国津神(特にスサノオ:治水工事をする集団が祀っていたといわれている)を祀ってある神社が近くにある場所は、比較的安全だといえるようです。
このようなところからも、ある程度推測が可能です。

このように、ちょっとしたことでも知っていれば、出先での災害チェックに役に立つかもしれません。
ちょっと気にしてもらえれば幸いです。

地盤の強弱を調べる方法

6月に入り、いよいよ梅雨のシーズンになりました。
東京も平年並みの6月7日頃に入梅したようで、不安定な天候となっています。
今年の梅雨はどうなるのでしょうか。
空梅雨にならなければ良いですが・・・

その逆に大雨で河川が氾濫したり、土石流で家が倒壊したりするのも困りものです。
今から充分に備えておく必要があります。
水に対して、思いの外打てる手が少ないですが、土嚢袋の準備や長靴の用意はしておいた方が良いでしょう。

とろこで、河川の氾濫等で被害を受けやすいところというのは、どのように調べたら良いでしょうか。
基本的には、地盤を調べたいですよね。
川のすぐそばは当然ですが、現在の土地を見ただけでは分からない、意外なところも被害を受ける場合があります。
特に地すべりなどは、その傾向が強いように思います。
こういうのは、地盤を調べると分かることが多いです。

このような場合、真っ先に思いつくのは古地図ではないでしょうか。
ブラタモリでもよく出てくるアレですね。
確かに古地図は大変参考になるものです。
しかし、なかなか手に入りづらいですし、読むのもなかなか手間です。

そこでお勧めしたいのが、国土地理院の土地条件図です。
何かテレビショッピングみたいですが、国土交通省に置かれている機関なので、サイトは無料で閲覧できます。
安心して閲覧してください。

土地条件図
http://www.gsi.go.jp/kikaku/

こちらのサイトに入り、
・土地条件図の閲覧
という文言をクリックして、調べたい市町村を入力すれば、地図が出てきます。

地図の中で、表示用凡例を見ながら分類を確認すれば、水害にあい易いかどうか、判断がつくでしょう。
例えば、河川のそばで土を盛っていて、などという地域は、水害に対して、他の地域より神経を使う必要があります。

表示用凡例
http://cyberjapan.jp/legend/lcm25k_2012/lc_legend.html

この土地条件図は、地震の際、被害にあい易いかにも使うことが出来ます。
地震の揺れやすさや耐性などは、地盤の強さと非常に密接な関係があります。
水が出やすいところは、地震の際も被害が大きくなりやすいので、注意する必要があるでしょう。

土地条件図は、無料で簡単に地盤を調べることができるので、大変便利です。
皆様も、ぜひ一度ご確認ください。
不動産の購入を検討されている方も、その地域を調べてみることをお勧めします。

改正個人情報保護法が施行されました

昨日、平成29年5月30日、改正個人情報保護法が施行されました。
主な改正点は以下の通りです。

1.定義の明確化
顔認識データなどが個人情報にあたることが明確化されるなど、定義が明確化しました。
また、要配慮個人情報(人種、信条、病歴等)については、原則として本人の同意を得る必要があるなど、より個人情報の保護がなされるようになっています。

2.適切な規律の下で個人情報等の有用性を確保
一定のルールを設け、個人を識別することができないように加工して、これを活用することができることになりました。

3.個人情報の流通の適正さを確保
オプトアウト規定による第三者提供に一定の手続きを要求する、トレーサビリティを確保するなど、名簿屋対策を法律化しています。

4.個人情報保護委員会の創設
内閣府の外局として個人情報保護委員会(https://www.ppc.go.jp/)を創設し、立入調査等の権限を付与しています。

5.個人情報の取扱いのグローバル化
法令等により認められた方法や国、本人の同意があった場合、外国への第三者提供が可能となりました。
また、日本の居住者等の個人情報を取得した外国の個人情報取扱事業者も本法の適用を受けることとなりました。

6.請求権
本人による開示、訂正、利用の停止等の求めは、裁判所に提起できるようになりました。

事業者として特に重要なのは、5000件以下でも本法が適用され、個人情報取扱事業者として責任を負うことでしょう。
うちは個人情報はないから・・・というわけにはいきません。
従業員のマイナンバーや取引先の名刺(メールアドレス)などもあり、その管理は非常に重要になってきます。

管理者の選任やマネジメントシステムの導入も必要となってくるでしょう。
その意味では、プライバシーマークに近くなった感じがします。

事業者にとって、個人情報は情報は非常に有用でもあります。
しっかり管理して、さらなる事業の発展を期待したいところです。

本改正については、経済産業省のパンフレットが分かりやすくてお勧めです。
ぜひ一度ご覧になることをお勧めします。

個人情報の取扱いのルールが改正されます
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/downloadfiles/01kaiseikojinjohopamphlet.pdf

ランサムウェアについて

最近になって、ようやっとBCPやBCMという言葉が普通にビジネス用語として散見されるようになってきました。
英国規格協会は、BCMを「組織を脅かす潜在的なインパクトを認識し、利害関係者の利益、名声、ブランド及び価値創造活動を守るため、復旧力及び対応力を構築するための有効な対応を行うフレームワーク、包括的なマネジメントプロセス。」と定義しています。これは簡単にいうと、リスクを管理して、地震等の問題が発生したとき(リスクが顕在化したとき)に最小限の被害で食い止めるとともに、目標時間内にある程度復旧して事業(業務)を継続させる仕組みです。

わが国では主に地震対策をBCMと考えていることが多いようですが、リスクには地震だけではなく、落雷、雪害等の自然災害やパンデミック、テロ等様々なものがあります。
ですから、BCMは地震だけではなく、総合的にリスク対策を行う必要性があるわけです。

例えば、最近話題にあがっているランサムウェアもその一つです。
実は今年に入って急に増えたというわけではなく、昨年くらいから急激に増加しているリスクです。
ちなみに、今年の春の情報セキュリティマネジメント試験の午後問題に出題されており、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)も注目していたことがうかがわれます。

ランサムウェアはマルウェアの一種で、以下の特徴を有しています。
・メールに添付されたファイルや記載されたURLへのクリックで感染する
・感染した端末のファイルを勝手に暗号化することによって使用できなくする
・元に戻すことと引き換えに「身代金」を要求する

また、「身代金」についても以下のような特徴があります
・「身代金」は通常ビットコインのような匿名性の高い電子マネーでの決済となる
・「身代金」は法外な金額というよりはこのくらいなら・・・と思わせる額を提示する
・支払いには期限を設け、正常な判断を失わせようとする
・支払後は復号キーが送られ、暗号化されたファイルが再び使用できるようになることが多い

以上のような、なかなかやっかいなリスクです。
払えないわけではない額の「身代金」を支払うと元に戻る(かもしれない)というのが曲者です。

ランサムウェアは広く浅く金銭を得るために、支払いがあるとファイルが開放される可能性が高いです。
しかし、そのために個人や会社の情報を相手に渡すことになるので、標的型攻撃のようなより手の込んだ攻撃をしてくる可能性があります。

また、このような攻撃をしてくる相手は、反社会的な組織であることが多く、テロ等の資金源となっていることが推測されます。
緊急性があるとしても、簡単に支払うのは考えものです。

上場企業の中でも支払ったという報道がなされていたようですが、反社会的組織への支払いだとなった場合、そのような組織への資金供与という問題も出てくる可能性がありますし、パナマ文書のように、あとで公表されることも考慮しなければなりません。
もっと慎重な対応が望まれます。

リスク管理は日頃からの対策が重要です。
これは地震でもマルウェアでも変わりません。

例えば今回のようなコンピュータウィルスの場合、
・OSやアプリケーション(特にマルウェア対策アプリ)のアップデートを怠らない
・不用意に実行ファイルをクリックしない
・メールのあて先や文章がおかしくないか確認する
・こまめにバックアップする
・可能であれば対策システムを導入、運用する
という予防策を講じ、もし不幸にしてかかってしまった場合は、
・「身代金」を要求されても支払わない
・まずは落ち着き、しかるべきところに相談する
ということを徹底すべきでしょう。

なお、ランサムウェアに関しては、ID Ransomwareというサイトがあり、こちらにサンプルを送るとウィルスの種類等を特定してくれます。
解除ツールがあればそれも表示してくれるようなので、それがあれば「身代金」を支払わなくてもファイルを復号できるかもしれません。

サイト名:ID Ransomware
https://id-ransomware.malwarehunterteam.com/?lang=ja_JP

ISO9001:2015における品質マニュアルについて

ISO9001:2015版への移行が始まってから、約1年半が経過する。
移行審査は、ようやく始まった感がする。
その中で、2015版では、品質マニュアルは、要求事項ではなくなった。しかし14001(環境マネジメントシステム)や27001(情報セキュリティマネジメントシステム)と同じく要求事項ではないが、審査機関では、品質マニュアルを暗に求めている。コンサルタントや雑誌なども品質マニュアルを作成することを推奨している。

私は、6組織の移行審査を実施した(2017年4月現在)。
規格要求事項と同じく4.1から10.3まで、そのまま書いているものが、5組織あった。
1社のみ、品質マニュアルに、文書管理やマネジメントレビュー、内部監査等の手順を書いたものがあった。

過去多くの組織は、規格の要求事項4.1から8.5.3までをそのまま書いている品質マニュアルが多かった。
今なお、それを踏襲しているようだ。
なお、後者は、品質マニュアルは作成していなかったが、審査機関から品質マニュアル又は品質マニュアル相当を再三、求められ、手順をいくつかまとめたものを品質マニュアルとして提出したと聞いた。

過去、ISO9001:2008での審査時、品質マニュアルは、どのように作成するとよいかを尋ねた。
当組織は、規格の要求事項4.1から8.5.3までをそのまま書いていた。まず最初に品質マニュアルは、読まれているかと聞いた。
すると、管理責任者以外は、読んでいないのではないかとあった。
誰のために作成しているのですかと嫌味かもしれないが、聞いてみた。
多少時間をおいて、審査機関、審査員のために作成しているのかもしれないとあった。

いや、審査員は、何回も審査に行き、規格要求事項は、頭の中にあり、そらんじているぐらいだ。
従って、皆さんが、どんな規定、手順書を作っているかを知りたい。
それも文書・記録の一覧表があり、それでわかる。審査員は、審査対象組織に対しては、専門性を付与されており、どんな文書・記録がなければならないかもわかっている。
そして、皆さんの業務がどのように進められているかもおおよそ知っている。

しかしこれらを再確認したい。それは、ISO9001:2008で、品質マニュアルに対する要求事項b)品質マネジメントシステムについて確立された“文書化された手順”又はそれらを参照できる情報、c)品質マネジメントシステムのプロセス間の相互関係に関する記述 ではないかと話した。
そして、認証登録するうえで、a)品質マネジメントシステムの適用範囲,除外がある場合には,除外の詳細、及び除外を正当とする理由(1.2参照) が必要なんですと話した。

2015版では、品質マニュアルは、要求事項ではなくなった。
それは、審査員は組織の業務内容を熟知し、文書・記録等がどうあらねばならないかを知っているからであろう。

また従来のa)は、「4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定」で、審査の中で、確認することになっている。またこの内容は、変化する4,1、4.2等を踏まえて、毎回審査することになっており、その点が従来と違っている。

このように考えた時、品質マニュアルは、必要か、不必要か、又は必要ならどのように作成すべきかを検討しなければならない。
多くの審査機関が品質マニュアルを求めている。
組織は、認証を継続していく上で、断るのは、難しい。

それで、審査機関向けに作成しては、どうだろうか。審査機関は、審査計画書を作成して、審査をすることになっている。
従って、審査計画書ができ、審査するには、どんな内容があればよいのだろうか。
それは、組織は、過去の経験からわかることだろう。

文責:藤井 敏雄(認証システム見直しセミナー講師)

事業継続マネジメント(BCM)とは、何か?

標題を正しく理解するには、事業継続に関する取り組みとは、すなわち、事業(あるいは業務)の中断や阻害を引き起こすインシデントに抗するための取り組みと言い換えることができる。そこで、まずはこのインシデントの概念を正しく理解しておく必要がある。ISO22300-用語「インシデント」の定義を見ると、

中断・阻害、損失、緊急事態又は危機になり得る又はそれらを引き起こし得る状況」

とある。

ところが、日本では、インシデントの意味をこの定義を部分的にしか捉えて(下線で示す)いないため、大規模な災害や新型インフルエンザなどの感染症の流行による操業中断等をすぐ連想してしまうが、もともとの意味はより広範な対象を含む。例えば、

 

○豪雪のため飛行機の欠航が発生した

○強風のためJR特急のダイヤに乱れが発生した

○信号のトラブルのため山手線に遅れが出ている

○各地時々発生しているサーバーダウン

○銀行のATMが時々システムダウンする

これらは、主にサービス産業分野で発生するインシデントである。

 

モノづくりの現場の例では

○材料の混合比を間違えて投入したため、ロット不良が発生した

○材料のグレードを下げたため、やはり製品バラツキが大きくなり、品質低下を招いた

○検査漏れに気づかずに出荷したため、クレームが多発した

○製造工程で作業効率の悪いプロセスがあり、生産性向上のネックになっていた

 

これらの例からも分かるように、事業の中断・阻害を引き起こすインシデントには、災害・事故・インフラ障害等、さまざまな操業中断・障害・トラブル・サービス停止等に繋がる事態を対象として考える必要がある。

従って、事業継続に関する取り組みを規定し、運用管理するプロセス、すなわち、事業継続マネジメント(BCM)は、必ずしも大規模な災害のような重大リスクに限らず、より広汎な事業(製造及びサービス提供)の中断・阻害・障害・トラブルを招き得る事態を対象に事業継続に関わるリスクを想定しないといけない。実際に、事業継続マネジメントをISO22301による用語の定義3.4で確認すると、

組織への潜在的な脅威、及びそれが顕在化した場合に引き起こされる可能性がある事業活動への影響を特定し、主要なステークホルダの利益、組織の評判、ブランド、及び価値創造の活動を効果的な対応のための能力を備え、組織のレジリエンスを構築するための枠組みを提供する包括的なマネジメントプロセス」

と定義されている。

このように、大規模な災害のような重大リスクとか、事業の中断・阻害を引き起こすインシデントという限定的にリスクを捉えていない。すなわち、「組織への潜在的な脅威、それが顕在化した場合に引き起こされる可能性がある事業活動への影響を特定し、・・」の部分は、「組織を取り巻く脅威(リスク)が潜在的か、または顕在化したかを問わず、組織の事業活動に及ぼす影響を特定し、・・」というように組織の事業活動に影響を及ぼす脅威(リスク)はすべて対象として扱い、脅威(リスク)に対して利害関係者への利益確保、組織の評判やブランド力の向上のための効果的な対応力の強化を図ることはもとより、さまざまな脅威(リスク)に対する抵抗力(レジリエンス)を予め構築するための枠組みを提供する包括的なマネジメントプロセスである。と解釈できる。

 

一方、ISO9001規格による品質マネジメントシステムは、組織の事業活動を主に品質に着目して構築されたシステムである。このシステムは、主に平常時における事業活動を対象に意図した結果が得られるよう構築されている。

そこで、次回には、「レジリエンスを強化した品質マネジメントシステムの必要性」について、その考えを述べてみたい。

*QMSの「意図した結果」とは、ISO9001:2015年版の箇条1の適用範囲で示されている

  1. 顧客要求事項及び法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供する、と
  2. 顧客満足の向上、のことである。

形式的QMSから実質的QMSを実現するための支援事業を始めました

当協会では、組織の設立目的に沿って事業を行って適切で正当な収益をあげることではじめて存続が可能となる本来のシステムを取り戻せるよう、その支援事業を新たに始めております。

●支援事業:「形式的QMSから実質的QMSの実現に向けて」

この事業に関する内容は、当協会ホームページの「実質的QMSの実現に向けての支援事業」をご覧ください。
「実質的QMSの実現に向けての支援事業」

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