内部監査の目的

私は、ISO9000の審査員を1995年から行っている。1994年版が出た直後であった。94年版から審査を始めた。審査では、登録認証(登録審査)、維持認証(定期審査)(注1)を通して、適合性を見ていた。不適合を見つけることが楽しみであったかもしれない。その後、2000年改訂を経験し、審査員として、考え方が変わってきた。それは、不適合を摘出することも大事だが、受審組織が審査を受けて、良かったと感じるかどうかを考え始めた。それは、要求事項に書かれた文言だけの審査からの脱皮を意味していた。いやいや文言の解釈には、受審組織、審査員により、異なるものがあった。

94年版の審査は、簡単であった。要求事項どおりであればよかった。箇条に従って審査すればよかった。文言も同じものを要求していた。しかし00年版から、受審組織の文化、風土を尊重し、言葉も受審組織の言葉を使っていこうとなった。審査方法も顧客の業務の進め方、プロセスに従って行う、プロセス審査となり、規格要求事項の箇条どおりではなくなった。このような中で、「受審組織が審査を受けて良かった」と感じるには、どうしたらよいかを考え始めた。審査方法が変わり、容易に結論は出なかった。審査員として、顧客が実施している内部監査を見ることは、手短な効果を上げるものだと考えた。

どこの受審組織も内部監査は、実施している。いや9001:87から今も9001:2015でも内部監査は、必須であり、内部監査を実施していないと審査を受けられないものである。私は、内部監査の効果は、内部監査の目的設定にあると考え、受審組織がどのように目的を設定しているかを見ていった。大きな組織では、ISO9001:2015要求事項と同じく、
a) 次の事項に適合している。
1) 品質マネジメントシステムに関して,組織自体が規定した要求事項
2) この規格の要求事項
b) 有効に実施され,維持されている。
をそのまま記述しているものが多かった。中小企業では、コンサルタントから言われて、目的を、「定期監査」と記述しているものが多かった。また監査の目的を書いていない受審組織もあった。

内部監査の目的について、何も書いていないのは、論外かもしれないが、審査を受けるにあたり、規格が要求しているから、実施しているのだと言わんばかりの受審組織があった。
内部監査の目的を「定期監査」としているのは、監査の種類を表すものであり、目的ではないと説明し、上記ISO9001:2015と同じくa)、b)が目的を示していると説明した。監査計画書で、上記a)、b)を記述している受審組織には、適合性は、登録審査、移行審査にて、概略、クリアしているのではないか。適合していることを確認する、いや不適合を見つけることを目的にして、効果が上がるだろうか、被監査部署は、いい感じがするだろうかと疑問を投げかけた。そして、b)の「有効に実施され、維持されている」とは、どんなことだろうかと議論していった。

時間の経過とともに、ものごとをなしていく、受注の獲得、設計、製造及び品質保証を通して結果を出すために、やり方(手順)、設備、人、材料、評価等4M,5Mは変わっていくでしょう。その変化に品質マネジメントシステムが対応しているかを見ていく必要があるのではないだろうか、と話した。また逆に他社や業界の変化から自社の立ち位置を確認し、4M,5Mを変更することを促し、品質マネジメントシステムをスパイラルアップしていくのも必要ではないか と話した。これらについて、受審組織の了解を得た。

更にa)の適合性については、9001規格要求事項及び社内で規定した要求事項等をそのまま箇条通り確認して効果が上がるだろうかと話し、プロセス審査なので、業務の流れ、ものの流れに従って確認していくと良いと話した。規定と現実の相違については、議論し、多分規定に無理があるのではないかと話し、不適合にするのではなく、手順ほかの改善につなげてはどうかと話した。更に顧客クレームや内部、外部で発生した不具合、不適合について、横展開、規定と現実を再確認し、よりよい4M、5Mにするよう改善を見いだす監査にしたらどうかと提案した。

このような審査をしていく中で、内部監査の目的をただ、a)、b)と書くのではなく、更に具体的に、目的を狭小化することにより、効果が上がるのではないかと話してきた。例えば、○○のトラブルの発生により、手順、設備、人、材料、評価等をどのように見直したか(他部署の確認を含む)、それは、次の△年に耐えられるか と書いたらどうかと話してきた。受審組織で、これを実践しているところは、内部監査で被監査部門から喜んで受けるようになり、効果が上がってきていると聞いている。更に他の審査員がこれを見習い、内部監査の目的が具体的になっていないと改善の機会に指摘するものを見いだすと、何かうれしい気持ちになる。

注1:更新審査、再認証審査は、その後に始まった。

藤井 敏雄